低学力大学生

 大学生の学力レベルが低下していることは、20年位前から知っていた。
 小学生の分数計算ができない大学生が数割存在することを書いた本もあったように思う。

 私の出た大学は、地方大学ではあったが、県外者の比率が高く、それなりに特色もあったように思う。その当時は国立大学は一期校と二期校に分かれており、入試も大学が独自に実施していた。それが共通一次試験が実施され始めてから地元学生の比率が高まり、それまでは滅多に存在しなかった授業について来れない学生が目立ち始めたとの教授の話を聞いた。

 旧文部省と文部科学省が教育制度をいじくればいじくるほど、日本はおかしくなったと感じている。先日は教科書検定の秘密性の改善を行うようなことが新聞に載っていたが、遅い。本当に役人行政である。

 今の高校生は理科も2科目しか学ぶことができないようだ。私達の時代は、理科は物理、化学、地学、生物の4科目を学んだ。だから、生物を学んでいない医学部合格者が大学合格後に塾で高校生物を学んだりする状況もあったように記憶している。どこまで日本の教育をおかしくすれば良いのか。
 ゆとり教育導入前の議論で、一つの能力に優れた人間論が盛んに言われた。そこから短絡的に凡人の学ぶ教科も減らされた。しかし、凡人は社会に出ると何でもしなければならない自分の好きなことで飯が食えるのは極一部の人間だけである。凡人は何でもしなければならないから、何でもできるように準備しておかねばならない。

 12月14日付朝日新聞3面に『新学歴社会 中高の内容、大学が補習』の記事。
 日本語、英語、数学の中高レベルの問題で、到達度が測れる「プレースメントテスト」を24大学で行った所、日本語が中学生以下の判定が、国立大で6%、私立大で20%。06年度には66%が中学生以下と判定された大学もあったとのこと。学生の半分以上が、中学生レベル以下の大学とは一体何なのか

 今や中学生レベル以下の大馬鹿者が大学に行く時代になったということか。

 衣食足りて、学ぶ意欲もないのに子供を大学にやらす金持ちという人種もいれば、アメリカのバブル崩壊の影響で契約解除されて年末に家を追い出される人もいる。
 本当におかしな、出鱈目な世の中になったと思う。

 私は高校には蒸気機関車に乗って通学した。まだ、社会全体に貧しさが残っていた。漢字や英単語の暗記は、新聞広告の裏紙を束ねて、それにボールペンで何度も書いて覚えた。約10日間でボールペンのインクが無くなった。担任に東大に行けと言われていた同級生は1週間でインクが無くなっていた。今、広告の裏紙に漢字や単語を書いて覚える人間はいるのだろうか

 娘は成績は悪い。受験時に現在の高校の合格ラインに達していないのにランクを落とすのを嫌がって、現在の高校を受験した。受験前の10日間くらいの猛勉強は凄かった。運良く合格したが、成績は常にびりである。何にも分かっていないかと思っていたが、時々勉強を聞いてくるので教えてみると大体のことは理解している。それが成績に現れないのは、何かがもう少し足りていない。ちょっとした何かだと思う。

 会社では若い社員に資格取得を推奨している。勉強会もする。しかし、中々合格しない。自分も社会人になって若いときは、仕事と遊びが忙しくて勉強しなかった。私が持っている大半の資格は40台後半から取得したものである。ほとんど会社の業務に必要なものである。同じ事を2度勉強するのは非常に非合理的なので気合を入れて勉強した。その為か、受験して落ちたことは無い。取得した資格のレベルは大半が大学卒業程度であるが、受験勉強に役に立ったのは高校時代の物理と化学である。若い社員を見ていると何か基礎学力が低下しているのを感じる。中には全く論理的思考のできない人間もいる。

 学生の学力低下を実際の会社の現場でも感じる。要するに技術的な話が通じないことを意味する。国民の学力低下は、日本の国力低下に通じ、国民全体の生活レベルの低下に繋がる。

 大学卒の意味も昔と変わった。明治・大正時代は学士は日本や会社の指導者になったのだろう。現在では、普通の大卒者は現場指導者か下手すると現場の担当者で終わる高卒の年配者には非常に優秀な人たちが多い。貧しさゆえに進学できなかった人たちである。それらの人達の足元にも及ばない馬鹿大学生が大量生産される日本の現状。本当におかしな国になったと思う。

 中学生以下の学力レベルの大学生が本当に大学卒と言えるのか。
 こんないい加減な制度を放置する文部科学省とは一体何なのか!

 金は無くても成績が良ければ誰でも大学に行ける制度でも確立したらどうか。
 それが日本の将来のためになる!

(2008年12月14日 記)

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